犬夜叉 お姫様の結婚の条件


2005年12月22日

「うる星やつら」 や 「らんま1/2」 でも、「お姫様の結婚の条件」
というモチーフが使われていたのですが、犬夜叉 でもこのモチーフが使われています。

犬夜叉 01.08 帰還 高橋留美子 小学館
犬夜叉 01.08 帰還 高橋留美子 小学館

犬夜叉 01.08 帰還 高橋留美子 小学館

犬夜叉は「火鼠の毛で織った衣」を、かごめに被せてあげます。「火鼠の毛で織った衣」とは、竹取物語に出てくる「火鼠の皮衣(かわぎぬ)」のことですが、 これはかぐや姫が結婚の条件として、阿倍御主人(あべのみうし)に持ってくるようにと言いつけた品です。

竹取物語では、阿倍御主人(あべのみうし)は、大金をはたいて中国からこの品を取り寄せますが、これを火にくべてみたところ、あっさりと燃えてしまいこの 品が贋物であったことが判明します。

犬夜叉 02.03 魂移し(たまうつし) 高橋留美子 小学館
犬夜叉 02.03 魂移し(たまうつし) 高橋留美子 小学館

犬夜叉がかごめに被せてあげた衣は、結羅(ゆら)の鬼火髪(おにびぐし)にもびくともせず、かごめを守ります。

つまりこれは、犬夜叉がお姫様の結婚の条件をクリアしたということに他なりません。



ところで、火鼠の皮衣は、中国の崑崙山(こんろんざん)で産するという、火浣布(かかんふ)のことではないかと言われています。崑崙山は、弱水という川 と、炎を噴出する山に囲まれていて、山の上の動植物は、火炎の中で生まれ大きくなるそうです。これらの動植物などから作られたのが、火浣布(かかんふ)で あると言われています。(捜神記)

しかし、この火浣布(かかんふ)は、実際は石綿のことだったのではないかといわれています。マルコ・ポーロの東方見聞録の、ギンギンタラス地方の記録に、 西洋では、サラマンダーの毛から作られるといわれている燃えない衣は、実は鉱物から作られたものである。と書かれています。そして、この布が汚れたなら ば、火にくべると汚れだけが燃えて、布は雪のように真っ白になる。と書かれています。

更に、江戸時代には、平賀源内が石綿からこの布を作り、「火浣布略説」という本を書いています。

火浣布略説 平賀源内

火浣布。また、火毳(かせい)ともいう。「浣」の字、「瀚」の字に同じく。
物を洗うことにて。この布汚るるときは、火に入れて焼けば、垢は悉く焼落て布は少しも損ぜず。さながら火にて浣(あらう)がごとくなるゆえ、名づけて、火 浣布という。
・・・・
神異経(しんいきょう)にいわく、南荒(なんこう)の外、火山あり。長さ三十里、広さ五十里。其の中、皆、燃えざる木を生ず。昼夜、火燃ゆ。嵐、風、強き 雨にも消えず。火中、鼠あり、重さ百斤。毛の長さ二尺余。細いこと糸のごとし。これを以って布に作るべし。常に火中に居れば、色赤し。時々外に出て色白 し。水を以ってこれをすすげば即、死す。其の毛を織りて布とす。火浣布と名づく。
・・・・
この物、唐土にては識ることを知らず。ただ西域より希に渡りたるもの故。唐人も知らずして。或いは、火山蕭丘(しょうきゅう)にある火鼠の毛。または、木 の華。或いは木の皮等にて織りたるものといえるは、大なる誤り也。蕭丘(しょうきゅう)、火山、火ありて常に燃ゆれども。是は即ち陰火(いんか)また、寒 火(かんか)ともいいて、常の火のごとく物を焼く火にあらず。抱朴子(ほうはくし)に曰く。蕭丘に自然の火あり。一種の木を生じて、小さく焦げて黒し。陸 游(りくゆう)が曰く。火山軍其の地、鋤耘(すきくさぎり)て、深く入れば、烈焔(ほのお)ありて種植(さくもつ)を妨げずと。

按ずるに、我が邦、越後妙法寺村に出る火の類にして。物の焼かざる陰火なり。其の陰火中に生じたる、鼠にもあれ、木にもあれ、常の火に入るときには焼かざる といういわれなし。然(そ)を理に暗き唐人ども。火に陰陽の二火ある事に心つかず。もとより火浣布は、外に一種の物を以って製する事を知らざる故。かかる 不稽(ふけい)の説をなす。大いに笑うべきにたへたり。

又、我が邦にては、古(いにしえ)より名のみ伝えて、其の物を見し者もなき故に、竹取物語にも火鼠(ひねずみ)の裘(かわころも)とて至ってなきものの譬 えとすれば、我が邦もとより其の形状(かたち)を見る者さえなし。

予この物、織べき事を考え出して。過し申(さる)の如月(きさらぎ)半(なかば)、創(はじめ)て製(せい)し出す。同じ年の三月、紅毛人(オランダじ ん)、東都に来る。官儒青木先生対話の序を得て紅毛人に見せけるに。カビタン・ヤンガランス、書記・ヘンデレキ・デユルトウフ、外科・コルネイレス・ポル ストルマン。など大に驚いて曰く。この品、紅毛天竺をはじめ世界の国々にても織法を知らず。トルコランド、という国に昔、一人ありて織出せしが、かの国、 乱世続きて織伝を失えり。故にこの物絶えて希なり。

火浣布の名を、ラテイン語にて、アミヤントス。また、アスベストス、ともいえり。ラテイン語とは、紅毛国の雅言(がげん)なり。常の紅毛語にては、ステイ ンフラス。又、アアルドフラス、ともいえりと。委しくは、しかつとこうむる。デル・ゲネイシエン・ナテユウル・トンデキサアカ・ウヲイト。一名レキシト ン・ハン・ウヲイト、といえる紅毛の書に出たり。
・・・・

(読みやすいように少し手を入れました。)
早稲田大学図書館 古典総合データベース
http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/bunko08/bunko08_c0288/

こうしてみると、本来、火鼠の皮衣(かわぎぬ)の色は、純白ですから、犬夜叉の着物よりも殺生丸の着物に近いようです。(竹取物語では、金青(こんじょ う)とある)

しかし、こんなところで、「アスベスト」という言葉が紹介されていたとは・・・


余談ですが、竹取物語は、結婚の条件をモチーフにした話ですから、本来ならば、大伴御行(おおとものみゆき)が、龍の首の玉をとってきて、かぐや姫と結婚 するというのが、本筋なのですが、どういうわけか彼も龍退治に失敗してしまいます。

参照リンク
「うる星やつら」の博物誌 かけめぐる青春
「らんま/考」 お姫様の結 婚の条件

犬研

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