Lycoris radiata


2006年09月29日

My will  Spanish



lycoris.jpg

お彼岸は過ぎたのですが、今頃がちょうど彼岸花の季節です。彼岸花の学名は、
Amaryllidaceae Lycoris radiata と言うのですが、
Amaryllidaceae(ヒガンバナ科)
Lycoris(ヒガンバナ属)
radiata(ヒガンバナ種)
ということになります。日本では、Amaryllidaceae科をヒガンバナ科と言うのですが、名前からすると、アマリリス科とした方がよいようにも思 えます。

Lycoris(リコリス) は、紀元前50年頃の女優の名前にちなむとされているようです。
芸名は、Cytheris といい、彼女は、アントニウス、または、ガルスの愛人であったと言われています。

参照 ラテン語徒然 ガッルス(?)断片
http://litterae.blog8.fc2.com/blog-entry-16.html
2007/11/08追加訂正

radiata は、車輪のスポークのことです。つまり、彼岸花は車輪のような花というような意味があり、・・・と、すると、犬夜叉のエンディングの彼岸花と観覧車のオー バーラップはまさに、彼岸花の学名にぴったりの描写ということになります。

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彼岸花は、曼珠沙華(まんじゅしゃげ)とも呼ばれます。これはインドのサンスクリット語の音を漢字に当てはめたものですが、日本大百科事典 小学館 の曼 珠沙華の項目には、次のようにありました。
インドの仏教伝説に現れる天界の花。曼殊沙はサンスクリット語のマンジューシャカの音写。神々が下界へ意のままに雨のように降ら せることから如意花{にょ いか}ともよばれ、その純白の花を見る者は黒い悪業{あくごう}を離れるという。日本では秋の彼岸{ひがん}のころに墓地などに咲く赤いヒガンバナの別名 となった。
しかし、これは誤りであると思います。曼殊沙華は、仏教に出てくる四華の一種の紅蓮華のことのようですから、もともと赤い花なのだと思います。

四華とは、天上に咲くといわれる四種類の花のことで、
白蓮華 大白蓮華 紅蓮華 大紅蓮華 の四種類なのですが、「大」については気にしなければ、白蓮華と紅蓮華の二種類を考えれ ばよいと思います。

白蓮華は、曼陀羅華(マンダラゲ)のことで、紅蓮華が、曼珠沙華(マンジュシャゲ)のことです。大日本百科事典は、曼陀羅華と曼珠沙華がごちゃまぜになっ てしまったのかもしれません。

中野のブロードウェーにある有名な漫画ショップ「まんだらけ」は、恐らく「曼陀羅華」から名前を拝借したのでしょうね。

曼陀羅華(マンダラゲ)は、和名ではチョウセンアサガオ・別名キチガイナスビなどともよばれるもので、学名では、Datura metel L 
このDatura(ダチュラ) には、スコポラミンというアルカロイドが含まれており、これが強力な幻覚作用を引き起こすそうです。ダチュラの幻覚作用については、村上龍のコインロッ カー・ベイビーズ でもお馴染みですね。

曼珠沙華(マンジュシャゲ)にも、「リコリン」というアルカロイドが含まれており、これも猛毒です。しかしこれを水でさらすと、毒の成分がぬけ、根の部分 は良質なデンプンとして食用にもなるそうです。

ところで、曼珠沙華(マンジュシャゲ)は、万葉集に壱師(イチシ)という名で登場するという説があります。
万葉集 巻11・2480番
路の辺の壱師の花の灼熱(いちしろく)く、人皆知りぬ我が恋妻を
こんにち、「壱師(イチシ)=彼岸花である。」というような説は、大日本百科事典をはじめ、広く一般に流布しているのですが、しかし、角川の古語辞典や広 辞苑などでは、壱師(イチシ)のことを、「たで科の野草、ギシギシの古名。また、エゴノキ、クサイチゴなどとも・・・」と書かれているだけで、彼岸花につ いては全く触れられていません。(これらの花は赤くはない)

実は、「壱師(イチシ)=彼岸花」説を唱えたのは、植物学者の牧野富太郎で、植物知識という本に、
『万葉集』にイチシという植物がある。私はこれをマンジュシャゲだと確信しているが、これは今までだれも説破したことのない私の 新説である。
と書いているのですが、これといった根拠は述べられていません。これからすると、「壱師(イチシ)=彼岸花」説は、それほど信憑性があるものではないよう に思えます。

  植物知識
植物知識 牧野富太郎著 講談社学術文庫

長々と、「りこりす」について引っ張ってきたわけですが、まあ、こういうのを発見したわけです。

Lycoris radiata


Lycoris radiata

2006/10/05


リンク:
犬研 彼岸花=壱師(イチシ) 説の怪

犬研

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